星月ころんさんとの相互お礼小説です。
謹んでころんさんに差し上げます。









   Do you catch a cold??







「おはようございます、マスタング大佐。」

「おはよう。」


すれ違う部下達が次々と敬礼をする中を颯爽と東方司令部内を闊歩するのは、『焔』 の二つ名を欲しいままにする、東方司令部実の権力者、ロイ・マスタング。
時刻はもうすぐ11:00を回ろうかと言う所で、『おはよう』を使っていいのかどう かハッキリしないような時間ではあるのだが、彼には急ぐ様子など全くなく、のんびりと自 らの執務室へと足を進めていた。


「やあ、諸君。おはよう。」

「『やあ、諸君。おはよう。』じゃないッスよ!! 今何時だと思ってるんスか!!
 あんたが溜めた書類の期限が今日の午前中までのが山ほど残ってるんスよ!!」

「そんなことはどうでもいい。所でハボック。」

「(何がどうでもいいんだ!!)なんスか?」

「なぜ、この部屋で一番最初に私に声をかけるのがお前なんだ?中尉はどうした??」

「中尉なら今日は体調不良で欠勤です。朝電話があったので。」

「何!?」


彼女が体調不良で欠勤など、滅多にあることではない。よっぽどでもなければ、彼女は這ってでも出勤してくるような所があるというのに・・・。


「電話で中尉から、大佐をしっかり見張っておくように言われたんで。
 中尉の体調不良の原因の1つは明らかに大佐なんスから、今日は反省してしっかり仕事して下さいよ。」


腹が立つが、ハボックの言うことは正しい。
人一倍彼女に迷惑をかけてしまっていることに改めて後悔の念が胸をよぎる。

本当は今すぐにでも、こんな男所帯のむさくるしいことこの上ないオフィスから 抜け出して彼女の見舞いに行きたいが、私が今日サボって一番困るのは、間違い なく彼女だ。


『仕方がない。今日期限の物だけでも終えてしまおう。』


そうと決まれば行動あるのみ。やれば出来ると噂のロイ・マスタング。
流石、その若さで大佐という地位に座っていることはあり、部下達が目を見張るような有 能っぷりを見せて午前中に全てのノルマを達成してしまった。


「これで文句はないだろう。私は午後から予定があるので、先に上がらせてもら う。」


と一言告げると、走る様に執務室を後にした。


「何時も今日の半分でもいいから、やる気を出してたら、こんな事にならないってのに。
 ホントにおかしな人だよなぁ。」

おそらく、というか確実にハボックのもう一人の美しい上官の家に向かったであ ろう黒髪の上官を思い出しながら、ハボックは一人、咥え煙草に火を付けた。





一方その頃の大佐は、ハボックの予想を裏切らず、真っ直ぐ部下であり恋人でもある彼女の家に向かっていた。
その手には帰りに寄った市場で購入した風邪薬、林檎、卵粥を作るための材料を持って。
彼女のアパートの部屋の前まで来ると、呼び鈴を鳴らす。
何時もなら直ぐに彼女が出迎えてくれる所なのだが、今日は反応がない。彼女の愛犬が廊下を走ってくるような音が聞こえるだけだ。
きっと、眠っているのだろう。先日、彼女から受け取ったばかりの合鍵を迷うことなく目の前の鍵穴に差し込むと、鍵を開けて中に入る。


「リザ、入るぞ。」


そんなロイを彼女の愛犬であるハヤテ号が『ワン!』と一吠えして、嬉しそうに 尻尾を振りながら彼を向かえた。


「コラ、静かにしないか。リザが寝室で寝ているんだろう??」


顔をしかめて、口元に人指し指をあてながらハヤテ号を見下ろすと、ハヤテ号はシュンとうなだれ た様子で視線を落とした。


「よしよし、いい子だ。お前もリザが心配なんだろう?
 後でお前の分の食事も用意してやるから、大人しくしているんだぞ。」


彼の頭を一撫でして、キッチンに買ってきた物を置くと、手を洗ってから彼女の寝て いる寝室に向かう。


「リザ、調子はどうだい?」


寝室に入って彼女の寝ているベットまで行くと、彼女はハアハアと息苦しそうに しながら眠っていた。
熱が高いのだろう、顔も赤く、汗もびっしょりかいている。
このままでは体温が下がって尚更悪化してしまうので、軽く肩を揺すって彼女を起こす。


「リザ、起きて。」

「ん……。た、大佐??」

「そうだ、私だよ。汗をかいてるようだから一度起きてパジャマを代えた方がいい。起きられるかい?」

「どうしてここに?仕事は……??」

「心配いらん。ちゃんと終えてきた。そんな事より早く着替なさい。
 なんだ?一人で着替えられないのか?なら私が手……。」

「着替えられます!!」

「ハハハ。少しは元気があるようだな。
 その様子なら、食事も薬もまだだろう?
 さっき、此処に来る途中で色々と買ってきたから、今作ってあげよう。
 パジャマを着替えたらまた大人しく寝てるんだよ。出来たら持ってくるから。」


元から赤い顔を更に赤くした彼女の頭を優しく撫でてから、代えのパジャマを手渡し、寝室 を後にする。



作ってやると宣言してみたものの、実を言うと料理の経験など皆無に等しい。
一人暮らしでも、外食や惣菜で何とかなるものだし、男の一人暮らしなど、大抵そんなものだと思う。
それに今は、彼女が旨い手料理を作ってくれるから、作る必要もないしな。

だが、今日ばかりはそうも言ってられない。
彼女には栄養のあるものを作ってあげて、早く元気になってもらわないと。
さっき、市場で作り方を聞いてきたから、何とかなるはずだ。


「よし!!やるか!」






出来たばかりの卵粥と薬を持って、再び寝室に入る。 そこにはパジャマをきちんと着替えて、再び眠りについている彼女がいた。


「りざ、お粥を作って来たんだが、食べられるかい??」

「はい。」


着替えたのが良かったのか、さっきよりも受け応えがはっきりしていることに安心する。


「熱いから、ゆっくり食べるんだぞ。食べ終わったら薬を飲んでまた休むといい。」

そう言って、フーフーと息を吹きかけて冷ました後、レンゲを彼女の口元に持っていってやる。
恥ずかしさから、赤い顔で私を睨みながらも食べてくれる彼女が可愛くて仕方がない。


「旨いか??(味見はちゃんとしたから大丈夫。旨いはずだ・・・)」

「はい、とっても。ありがとうございます。」


結局、彼女は器の中に入っていた卵粥を全てたいらげてくれた。
薬を飲ませた後、もう一度ベットに寝かせて布団をかける。

彼女が目を閉じたのを確認してから食器を片付けるために席を立とうとすると、突然何かに引っ張られて、不覚にもよろけてしまう。
後ろを振り返ると、布団から遠慮がちに出された彼女の白い手が、しっかりと私のシャツを握っていた。


「どうしたんだ?」

「あ、あの……。もう少しだけでいいので、そばにいてくれませんか………?///」

「もちろんだよ。君が眠るまで、ずっと此処にいるから。安心しておやすみ。」

「ありがとうございま……。」


安心したのか、言葉は最期まで続くことなく、彼女は再び深い眠りに落ちた。


「早く元気になってくれよ、リザ。」


そっと彼女の頬に口付け、しっかりと手を握ったまま、ロイも何時の間にか眠りの世界へ落ちていった。







翌朝。
昨日までの息苦しさが嘘のように、清々しい気持ちで目が覚めたリザは、左手に 包み込まれているような暖かさを感じてそちらに目をやると、リザの手をしっか りと握りながら、ベットサイドで眠っているロイを見つけた。
一晩中そばにいてくれたのだろう。昨夜は体調を崩して弱気になっていたにも関わらず、悪夢を見 ることもなかったのはそのお陰に違いない。


「ありがとうございました、ロイ。」


彼を起こさないように、そっとベットを抜け出し、押し入れからタオルケットを 取ってきて彼にかけ、そっと頬に口付けて寝室を後にする。

飼い主の足音を聞きつけたハヤテ号は、一目散にリザ目がけて駆けて来た。


「おはよう、ハヤテ号。あなたにも随分心配かけちゃってゴメンね。朝ごはんに しましょうか??」


ハヤテ号と共にキッチンに向かうと、其処は目も当てられない程悲惨な状態だった。
殻を入れずに割れなかったのか、いくつも無駄になっている卵。鍋をひっくり返した痕のある床、割られた数枚の食器………etc


「一体朝食は何時になるのかしらね??」


ため息混じりで呆れ声の彼女の表情に満面の笑顔が浮かんでいたことは、ハヤテ号だけが知る事実。







*あとがき*

ころんさんから頂いたリクエストは『風邪ひきリザちゃん』でした。
素敵なリクエスト、本当にありがとうございました。素敵リクエストをちっとも生かしきれてないorz、こんな駄文でよろしければ受け取ってやって下さい。
最後になりましたが、ころんさん、この度は相互リンクを本当にありがとうございました。

そして最後までお付き合い下さった皆様、ありがとうございました。