5000HIT記念に、氷上和奇様よりリクエスト戴いたアルメイ小説です。
エドウィン、ロイアイ要素有りの最終回後の妄想ネタになりました…(^^;)
少しでも楽しんで戴けたら幸いです。








   ゆらゆら。







もう何年が経つのだろう。
兄さんと僕の、自分たちの身体を取り戻す長い旅が終わってから。

あの時、空っぽの鎧姿で日々を生きていた僕は、なんとか元の身体を取り戻すことができた。
残念ながら兄さんの右腕と左足は、元には戻らなかったのだけれど…。

『元の身体に戻る時は2人一緒に。』
その約束は守られることはなくて、ずっと気にしていた僕に、兄さんはこう言ったんだ。


「心配すんなって、アル。確かに元の手足は返ってこねえけど、 俺には専属の機械腕(オートメール)技師がいるんだから、問題ねえって。」


兄さんと、その専属のオートメール技師であるウィンリィの関係は、相変わらずなんだけど。
(兄さんは、今でもやることがめちゃくちゃで、 しょっちゅうオートメールを壊してはウィンリィのスパナ攻撃を受けてるしね。)

でも、あの日から少しずつ、僕らの中の何かが変わっていった。

長い旅からリゼンブールに戻ってきた時、嬉し涙を流してくれたウィンリ ィは、あれからよく笑うようになった。
兄さんも、大きな肩の荷がおりて、張り詰めたままだった表情が随分とやわらかくなったと思う。
(身長もちょっとは伸びてるみたい。まだ僕の方が大きいけど。)

旅の途中で随分とお世話になった、軍部の人達はどうしているのかというと。

ラスト戦で負傷し、下半身不随になってしまったハボック少尉は、退役後も熱心なリハビリを続けていた。 そのおかげで、快復に向かってきている、とのこと。
いつか歩けるようになったら、少尉は背が高いから、今度は僕が見下ろされる立場になるのかな。
マスタング大佐は昇進し、ブラッドレイ政権崩壊後に新しい大総統となった、グラマン閣下の右腕として、忙しい毎日を送っているらしい。
全然仕事しなくて困ってるんだって、ブレダ少尉は言ってたけど…。

そういえば、大佐は近々結婚するんだそうだ。
大佐の副官、ホークアイ中尉と。
こないだ僕たちにも結婚式の招待状が届いていた。 仕事が忙しいから、知人を数人招いただけの、小さな式らしい。

兄さんは、
「大佐のニヤニヤした締まりのねえ顔なんて、気持ち悪くて見られるか!!」
なんて言ってたけど、式に行く時の礼服をウィンリィと探しに行ったりして、行く気満々みたいだし。
僕も中尉のウェディングドレス姿を見たいから、行くのを楽しみにしてるんだ。

こんな風に、アメストリスは徐々に平穏な日々を取り戻してきている。


ホムンクルスたちとの闘いの後、東の大国、シンに帰っていったリンたちはどうしてるんだろう。

『そういえば、メイも…。』


出会いは最悪だった。
僕がメイの友達である、シャオメイの誘拐犯だと疑われたり。 メイ自身もあの傷の男(スカー)の仲間だったりして。
だけど初めて会った時から、強い意思を秘めた目をもつ女の子だとも感じた。
現に彼女が、たった一人で長い長い砂漠を越え、異国の地にやってきた目的は、 シンの貴族の中では最も弱い立場にあった、メイの一族であるチャン家存続のためだと後から聞いた。

その小さな背中には大き過ぎる使命を背負い、フラフラしながらも自分の足で立とうとする、危なっかしい姿は、僕が知っている人たちによく似ている気がした。
だからなんとなく、放っておけなかったんだと思う。


誰一人欠けることなく無事に闘いが終わってグリードから人格を取り戻したリンと共に、メイがシンへと帰る前日。
メイの強い希望で、彼女のアメストリスでの最後の1日を、僕と2人で過ごす ことになった。

特に何かしたって訳でもない。
錬金術や錬丹術の話、普通の世間話をしながら、一緒にご飯を食べたり、買い物をしたり。それだけだった。
そんな何でもないことが、長い間できなかった僕にはすごく新鮮で、楽しく思えたんだ。
帰り道に繋いで帰ったメイの手は、人の手がこんなにも温かく、女の子の手があんなにもやわらかいってことを思い出させてくれた。


「今日はホントにありがとうございましタ。とっても楽しかったでス。元の身体に戻れてホントにホントに良かったですネ、アルフォンス様。
(ホントに豆粒男じゃないし、紳士だっタ。)」

「どういたしまして。僕の方こそ楽しかったよ。あ、それとね。何度も言ったけど僕のこと、様なんて付けなくていいよ。アルでいいから。」

「そんな、アルだなんて、恥ずかしくて呼べませン。じゃあ、アルさんって呼んでもいいですカ?」

「うん、いいよ。シンに帰っても元気でね。」

「ハイ、アルさんも。豆粒…、じゃなかっタ。鋼の錬金術師サンにもヨロシク言っておいてくださイ。お世話になりましたっテ。」

「分かった、伝えとくね。それじゃあ、またね。」

「マタ…。」


それ以来、僕はメイには会ってない。
リンとメイのシンへの帰還は、結局、前皇帝が生きている間には間に合わなかったため、不死身の話も叶わないまま終わってしまった。
その後、ヤオ家の長男であるリンが新しくシンの皇帝となり、民を治めているらしい。
『民がいてこその国である』、との確固たる信念の元で行われているリンの政治は、シンの国にも平和をもたらしていた。
以前は死人が出るほどに激しかった外戚争いも、リンが皇帝になってからは、徐々に沈静化していて、 メイの一族も暮らしがしやすくなったんだと、シンから帰ってきたロス少尉がこないだ教えてくれた。


『メイも、向こうで元気にやってるんだろうな…。』


「おぉ、アル!!お前こんな所にいたのかよ。」


2階の部屋で錬金術書に目を通しながら、そんな事を考えていた僕の所へ、兄さんがやってきた。


「お前宛てに、大佐から伝言を預かってきたんだ。 頼みたいことがあるから、明日の朝11時までに中央司令部に来て欲しいんだってよ。」

「明日って、また随分と急じゃない??明日の朝、始発に乗っていかなきゃ間に合わないよね。」

「ちゃんと切符も用意してやったから。ほら。」


僕の目の前で、1枚の乗車券をヒラヒラさせている。


「……ありがとう。って、兄さん。何か企んでない??」

「何言ってんだ。可愛い弟を助けてやろうという、兄ちゃんの優しさが分からないのか!?」

「普段があれじゃあねぇ…。」


『あれ』って…??
思い当たる節が有りすぎるエドワードは、苦笑いしながらも言葉を続けた。


「ま、まあ、セントラルで大佐に会えば分かるって。じゃあ、確かに伝えたからな。」


そそくさと部屋を出て行った兄さんを怪しく思いながらも、次の日、僕は言われた通り、 セントラルの中央司令部のマスタング大佐に会いに来ていた。


「お久しぶりです、大佐。あ、今は大佐じゃないんでしたよね。」

「正確には少将だがね。そういえば、前に私たちの結婚式の招待状が届いたと思うんだが、 君たちは来てくれるのか??」

「ええ。みんな楽しみにしてますよ。 ウィンリィが、『リザさんなら、ウェディングドレス絶対似合う!!』って言ってました。」

「そう!そうなんだ!!こないだリザと式場の下見に行ったんだが、 そこでリザにウェデイングドレスの試着をしてもらってな!!!それがまた驚くほどにきれいなんだ!!!!!!!!!!!」


一体、後ろにいくつ『!』が付いてるんだろう、と思うくらいの勢いで、ガバット立ち上がったると、右手のこぶしを強く握りしめている。
そんな大佐に圧倒されながらも、 こんなことを聞かされるためにわざわざリゼンブールから呼び出されたのかと思うと、内心腹が立ってきた。


「大佐…。じゃなかった、少将。それを言うために僕を呼んだんですか??」

「おっと、すまない。つい熱くなってしまった。 君を呼んだのは、今日の正午にセントラルに着く列車に乗って来るはずの客人を、 我々の代わりに迎えに行ってもらいたいと思ってね。 我々が行けるといいんだが、ご覧のように立て込んでいるからな。」


確かに、大佐の目の前には今にも崩れ落ちそうな書類の山が、3つも積み上げられていた。


「分かりました。その人をここに連れてきたらいいんですね??」

「ああ、別に連れて来るのはいつでも構わんよ。折角だから、セントラルのあちこちを案内してやってくれ。」

「はぁ…??」


訝しげな視線を送る僕を無視し、大佐はおもむろにポケットから銀時計を取り出す。


「おっと、もうこんな時間か。今から出ないと正午に間に合わないぞ。」


大佐に背中を押され、無理やり外に出されてしまった。
『なんなんだよ、まったく…。』
仕方がないので、僕はセントラル駅へと、その客人を迎えに行くことにしたんだ。


「セントラルー、セントラルー。お降りのお客様は、車内にお忘れ物のないようにお気を付けくださーい。」


セントラル駅に着いたのは、ちょうど正午。列車到着のアナウンスが流れている頃だった。

そういえば、客人って一体どんな人なのか聞いてくるの忘れた…。
これじゃあ、捜すに捜せないよ…。

焦っていた僕の目の前に、よく見知った人物が立っている。
一瞬、何かの見間違いかと思って目を疑ったけれど。


「「あっ……」」


「メイ!!」


そう。
そこにいたのは、確かにメイとシャオメイだった。


「アルフォンス様…!!!」


相変わらずのメイの言葉に、思わず苦笑してしまう。


「名前。またアルフォンス様になってるよ。アルでいいって言っただろ?」

「ア…。」


大佐はもちろんのこと、兄さんもきっと、このことを知っていたに違いない。
僕をだましたこと、後で何て文句を言ってやろうか、なんて考えながら、目の前でバツの悪そうな顔で 赤くなっている、彼女に笑いかけていた。







 *あとがき*

随分と遅くなり、本当にすみませんでした(T_T)
戴いたリクエストは、『ハッピーエンドのアルメイなら何でもOK!!』とのことでしたので、 随分と好き勝手させていただいてしまいました…(^^;)
少しでもご期待に沿えていたら嬉しいです。

とても楽しく書かせて戴きました。
氷上さん、リクエスト、本当にありがとうございました。
こんなのでよろしければ、どうぞお持ち帰りくださいませ。

最後まで読んでくださった方も、ありがとうございました。