犬夜叉最終回『明日』のネタばれを含みます。
原作を未読の方はご注意下さい。





























   ふたり。







長い長い旅の最後となった四魂の玉との決着から、もうすぐ3年。

かごめを無事にかごめの世界へ連れて行った後、 いつの間にか俺一人だけ、戦国時代へ戻ってきてしまっていた。

だからその月日は、俺の世界とかごめの世界を繋いでいた、 骨喰いの井戸が通じなくなってしまったのと同じ時間を意味していた。

女々しいと笑われるだろう。自分でもよく分かってる。
けれど、俺は3年が経とうとしている今もなお、3日に一度は骨喰いの井戸へと飛び込む。
自分でも気付かないうちに。必ず両目をしっかりと閉じたままで。

目を閉じている間に、かごめの所へ行けるんじゃないか、そんな気がしたから。
目を開けた時の俺の目に一番に映るのは、困ったように笑うかごめの顔。
そうなっていることを願って。

かごめをあっちの世界に送り届けた時、涙を流して帰りを喜んでいたかごめの家族を見て、 あいつがこんなにも多くの人間に愛されていたんだということに改めて気が付いた。
かごめのお袋も、草太もじいちゃんも、かごめにとってはかけがえのない存在で。
あいつらがいてくれたからこそ、かごめは生まれ、俺はかごめと出会うことが出来たんだ。
だからこそ、あいつらには、周りが思ってるよりずっと感謝してる。



…それでも。
どこを探してもかごめがいない現実は、なんとなくむなしくて。

かごめの声も、匂いも、この身体ではっきりと覚えているはずなのに、 それが本当にかごめのものであったのか、確かめる手立てはもうない。



かごめ。

今お前は、お前の世界で何をしてる?
俺がいない、あの世界で。

きっと幸せでいるだろうな。笑ってんだろう…。
お前をあんなにも想ってくれる奴らが、沢山いるあの世界なら。



なあ、かごめ……。
今、お前は何を見てる?
お前が見上げる空は、どんな色をしてるんだろうか。

俺が見ている空は、どこか味気なくて、いつの間にか色を失っちまったみたいなんだ。
本当の空がどんな色だったかなんて、もう忘れちまった。



出来ることならもう一度、お前に会いたい。
この空に色を与えてくれるのは、かごめ以外には考えられないから。

会いたいんだ、かごめ…。





犬夜叉と会えなくなってから、もうすぐ3年が経とうとしている。

新しく始まった高校生活は、とても平穏で。
ママや家族、たくさんの友達。
大切な人たちに囲まれて、楽しい毎日を送っていた。

だけど、心の中にいつの間にか空いていた大きな穴は、どんなに楽しくても埋まることはなくて。
こちらの世界で毎日を過ごしていると、ほんの数年前までは確かにあったはずの戦国時代での日常が、 夢であったかのように感じてしまう。
ただ一つ、それが確かに現実だったのかもしれないと感じられるのは、 高校で入った弓道部で、私の弓の腕前がそれなりに高いということくらいだった。

たとえそうであっても、気がつけば古井戸の前に立っていることはよくあった。
骨喰いの井戸に通じる、あの井戸に。

心の穴を埋めてくれるものが欲しかったのかな。

「おせーぞ、かごめ。いつまで待たせる気だ。」
そう言って、機嫌の悪そうな顔した犬夜叉が、ひょっこり現れてくれることを望んでた。
この穴は、貴方にしか癒せない、そう思ったから。



「犬夜叉…。」

その名を口にすると、犬夜叉のすべてがこの身に蘇ってくる。
喧嘩した時の、あの憎たらしい横顔。
共に闘った時の、勇ましい姿。
どんな時でも必ず助けに来てくれた時の、頼れる真っ直ぐで熱い視線。
ぎゅっと抱きしめてくれた時の腕の強さとそのぬくもり。

「かごめ。」
何度も何度も私を呼んでくれた、大好きなあの声も全部。



私の中にいる犬夜叉は、確かに犬夜叉だよね?
確かめたい。もう一度。
そして私の前で、あの笑顔を見せて欲しい…



犬夜叉。
今何をしているの?
私のいない、あの場所で。
危ないことしてないでしょうね?
怪我とかしてない?
あんたはいつも、無茶ばっかりするから…。



ねえ、犬夜叉…。
今、何を見ているの?
何を思ってる??



知りたい、どうしても。
今の貴方を。
貴方のすべてを。
会いたいよ、犬夜叉!!





「犬夜叉、ごめんね…。待っていてくれた…?」

「かごめ…。バカ野郎…。今まで何してたんだ。」


2人を繋いでいたのは、骨喰いの井戸でも、お互いの役割でもなく。
お互いがお互いを想う気持ち。それだけだった。
3年もの間、会えない時間を過ごしたのはきっと、お互いが自分たちの中でいかに大きな存在であったかを、 再確認するために必要だった時間なんだと思う。


犬夜叉はかごめと出会うために、
かごめは犬夜叉と出会うために、
生まれてきたことを強く強く感じていた。




「大好きよ、犬夜叉。」

「俺もだ、かごめ。これからもずっと、お前は俺が守り続けてみせる…。」


きっとこの想いは、永遠…。







 *あとがき*

初の犬かご小説でした。
最終回の素晴らしさに魅せられて、思わず書いてしまった話です。
やっぱり、犬夜叉は最高です!!
素晴らしい作品を生みだしてくれた、留美子先生に心からの感謝を込めて。
ありがとうございました。