珊瑚視点の詩
婚約前設定でお願いします。







   貴方という名の希望






あの日以来、安心して深い眠りにつけた事など、只の一度もない。



どんなに懐かしい穏やかな夢を見ていても、最後には必ずあの一夜にたどり着いてしまう。

生気を失い、虚ろな瞳で仲間や父上に鎖鎌を振り下ろす、弟の琥珀の姿を。

飛び起きるように目を覚ましては、自分の進むべき道を再確認させられる。



『奈落を倒し、弟を取り戻す。仲間や父上の仇を打つのだ』と。






だからこれ以上、仲間を得てはいけないと思っていた。

大切になれば大切になるほど、失う恐怖にさいなまれる事になるから。

どうしてもあの日を思い出してしまうから……。






それなのに……。






出会ってしまったのだ、彼等に。


犬耳を持つ、赤い火鼠の衣を纏った半妖の少年。
異世界から着た、心優しき少女。
愛くるしい姿をした、小さな子狐妖怪。



そして貴方。
深い紫の法衣に身を包み、風穴という奈落の呪いをその右手に持つ人。


最初は、全く真意の見えてこない貴方の一挙手一投足に、大いに心を乱された。

あまりにも自分と正反対であったから。

理解出来るはずなどない、そう思っていた。






でも………。




供に旅を続ける間に、どうしようもなく彼に惹かれてしまっている自分に驚く。

スケベで女ったらしで、いい加減で不良で、大嘘つきなのに。

もちろんいい所も沢山持っている、尊敬出来る人である事も知っていた。



それでもやはり愛してはいけない人だったのに……。



『珊瑚………。』


貴方に名を呼ばれるだけで胸は高鳴る。

見つめられるだけで、何も考えられなくなる。

貴方がそばにいてくれるだけで、生きる希望を得られるような気がした。


この感情は、紛れもなく恋だった。

自分でもどうしようもない程に、この想いは日々募っていく。



だが、今はまだ決して貴方には告げられない。

風穴という、大きな苦しみをかかえた貴方をこれ以上苦しめたくないから。

辛そうに笑うその顔を見たくはないから。






だから法師さま。
今はこの貴方への想いを胸の中に締まったまま、供に歩む事を許して。







*あとがき*

初書き弥珊です。
婚約前の設定で、珊瑚の弥勒への止められない恋心を詩にしてみました。
セットで弥勒verも書いてみましたので、宜しければそちらもお願いします。
読んで下さって、ありがとうございました(>_<)