|
法師さまだって、一度は知ってみたらいい。 私がいつも、どんな気持ちで貴方を見つめているかってことに。 想い人 故郷である妖怪退治屋の里に用事があった珊瑚が、 亡くなった父上や仲間達のお墓参りを兼ねて、犬夜叉達と別れて一人帰郷してから数日たったある日。 用事が済み、仲間達が待つ楓の村に帰ってきた珊瑚が一番に目にしたのは、一人 帰郷していた間も、ずっと会いたいと思っていた弥勒の姿だった。 村の若い女の人達の真ん中で、ニコニコと胡散臭い笑みを浮かべながら、手相占 いの最中というオプション付きで。 犬夜叉たちと比べればまだ短いものの、珊瑚も弥勒とともに旅を続け、寝食を共 にしている訳だから、弥勒のこのような態度など見飽きているも同然。 だが、少なからず弥勒に好意を抱いている珊瑚にとっては、決して見ていて気分 が良くなるものではない。 それに今日は、今までとは少しばかり事情が違う。 鬼女の集落でのあの一件以来初めて、数日の間お互い離れ離れになって、やっと再会できたのだから。 『あの時言ってくれた言葉は、やっぱり嘘だったのかな…。』 そんなことを考えてしまう。 あの時、弥勒は確かに自分に言ってくれたのだ。 奈落を倒し、風穴の呪いが解けた暁には、自分と結婚し、子供を産んで欲しいと。 確かに聴いたはずのその言葉も、実は自分の幸せな夢の中での言葉だったような気分にさえなる。 「ハァー…」と深くため息を付き、その場から離れようとした時、 珊瑚が戻ってきたことに気が付いたかごめが、七宝を抱えて駆け寄ってきた。 「お帰りなさい、珊瑚ちゃん。帰ってきてたのね。」 「待っておったぞ、珊瑚。」 自分の帰りを喜び、労いの言葉をかけてくれる仲間たちに感謝の念を感じながらも、なんとなく沈んだままな気分を隠すことはできなかった。 「ただいま、かごめちゃん、七宝。今帰ってきたばかりなんだ。私の留守中、なんか問題とかなかった??」 「いいや、何もなかったぞ。奈落にも妖怪にも遭わんかったしな。珊瑚はどうじゃった??怪我とかしてないのか??」 「ううん、大丈夫。ありがとう、七宝は優しいね…。」 珊瑚と七宝の会話の一部始終を聞いていた、一行の中で一番空気が読めるかごめは、珊瑚が元気のないことに気が付いた。 珊瑚の視線の先にいた弥勒の様子から、その原因が何であるかもすぐに分かった。 『全く、弥勒さまも相変わらずなんだから…。』 大切な親友に、こんなにも辛い思いをさせている青年法師に向けて、かごめは怒りの視線を送る。 かごめの鬼気迫る視線を感じ取ったのか、ようやくこちらに気がついた弥勒は、 珊瑚が帰ってきたと知り、村の女子たちと別れて、珊瑚らの所へとやってきた。 「珊瑚、おかえりなさい。帰ってきていたのですね。」 駆け寄る弥勒の言葉を無視してプイっと視線を反らすと、珊瑚は弥勒とは反対方向に向かって一人歩き出してしまった。 『『自業自得よね(じゃ)』』 狐につままれたような顔をしている弥勒に対して、かごめと七宝は心の中で同じツッコミを入れていたのだった。 3人がいた場所から少し離れた場所で、真紅の火鼠の衣を纏った半妖の少年もまた、その様子を見ていたことに、弥勒が気がつくことはなかった。 *あとがき* 犬夜叉連載を始めました。 よろしければ、お付き合いいただけると嬉しく思います。 |