こんにちは。(後半)



あの武術大会から数日後。


エドワードとアルフォンスの兄弟は、久しぶりに彼らの故郷であるリゼンブールにいた。

ウィンリィがエドワードに、どうしてもと頼んで次の旅に出る前に寄ってもらったのだった。


「たく、俺たちは忙しいんだぞ。一体どんな用だって言うんだよ、ウィンリィ!!」


「そういえば、まだ聞いてないよね。ウィンリィが僕たちをリゼンブールに呼んだ理由。」


「まあ、そう慌てなさんなって。エドにとっても悪い話じゃないと思うわよ。
それにそうやって怒ってばかりってことは、やっぱりカルシウムが足りてないのよ。牛乳飲まないし。
だからチビのまんまなのよ。」


「だ〜れが、カルシウム不足の短気豆粒ドチビかーーーー!!!!!」


「ちょっと抑えてよ、兄さん。」


ワアワアと暴れ出したエドワードを、アルフォンスが必死に抑える。



「だから、天才機械腕(オートメール)技師のこの私が、あんたの身長を伸ばす手伝いをしてあげるって言ってるのよ。」


「「え!?」」


「ウィンリィ、それ本当か!?何か良い案でもあるのかよ!?」


「もちろん。この私に任せなさいって。」


それからのウィンリィの話を要約するとこういう事だった。

エドワードが身長の伸びない理由の一つには、彼が右手と左足に付けている機械腕が生身の手足よりも重いために必要以上に身体への負担が掛かり、身長が伸びるのを邪魔している。

その為少しでも重量を軽くする必要があるが、強度を落とすことは出来ず、
その両方の条件を満たせる魔法のような機材が存在するのだが、それはあまりにも高額であり、軍属の機械腕技師でないと使用することが出来ない。

だからウィンリィは、その機材の使用許可を得る為にホークアイ中尉に頼んで武術大会に参加したという訳だった。


「でね、ちゃんと優勝出来たから、その機材を使ってあんたの新しい機械腕を作ってあげたって訳よ。」


「すごいや!!ウィンリィ。さすが、兄さんの事よく分かってるね〜。良かったね、兄さん。」


「あ、ああ…。」



今の話を総括すると、ウィンリィは自分の為にあんな危険な武術大会にまで参加して、新しい機械腕を作ってくれたということになる。

そんな彼女の気持ちなど全く知らず、あの時負けた悔しさも後押しして不機嫌になり、周りに当たってしまっていた自分が物凄く恥ずかしくなった。


「あ、あのさ。ウィンリィ。さっきは怒鳴ったりしてゴメン。あ、ありがとな///」


「…。
 私はリザさんみたいに闘う力はないし、いつもあんたと一緒にいることはできないわよ。
でも、私だってエドのこと心配なんだから…。」


「う、うん///」



これからは、もう少し大人になろうと決意したエドワードだった。


「そ、そういえばさ。ホークアイ中尉といえば、中尉はあの武術大会で大総統に何お願いしたんだ??」


「フフフ、内緒よ。リザさんと約束してるもの。」


「なんだよ、それ。」





2人の笑い声が、リゼンブールのロックベル家に響いている頃。


あのすこぶる機嫌の良かったマスタング大佐は、私服姿のままで東方司令部にやって来ていた。


「あれ??大佐、どうしたんスか??今日って確か、大佐非番のはずっスよね??」


あのサボりで有名のマスタング大佐が休日出勤だなんて、明日は大雨に違いないとハボックは思う。


「馬鹿者。私とて、用事で休日でも司令部に来ることくらいあるぞ。そういえば、中尉はどこだ??」


「中尉なら、大佐の執務室じゃないっスかね。
明日以降大佐が処理しなきゃならない書類を整理するって言ってましたし。」


「そうか、分かった。すまなかったな、ハボック。仕事の邪魔して。午後の業務も頑張ってくれよ。」


『あ、あの大佐が、俺を労ってるよ!!!
明日は大雨どころか、嵐でも来るんじゃねえのか!?あのぼろアパート、大丈夫かな…。』

思わず銜えていた煙草を落としてしまったハボックだった。



その頃の執務室。


「やあ、中尉。こんにちは。すまないね、私の仕事までさせているようで。」


「大佐!?どうして此処へ??そもそも今日は…。」



そう。先ほどから何度も出てきているが、今日のマスタング大佐は非番なのだ。

その理由は目の前にいる彼女が一番良く知っていた。




「私のお願いを聞いて下さるのなら、
近々マスタング大佐に1日有給以外の休暇を与えてあげて欲しいのですが。」


「ほう、それはまた随分簡単なお願い事だな。別に構わないが、何故また急に??」


「ここ数日、東方では通常業務以外にテロ等も頻繁に起こっており、司令塔であるマスタング大佐は働き詰めでしたので。それで…。」


「なるほど。それは大変だったな。
それにしても、マスタング大佐は実に良い部下を持ったものだよ。実に羨ましい。」




という訳なのである。


「ああ、その通りなんだが、どうしても君にお礼が言いたくてね。
君のおかげで久しぶりの休暇が取れたんだから。ありがとう。」


その言葉は、一点の曇りもなくロイの本心だった。

リザにミニスカを穿いてもらう機会が遠のいてしまったのは残念ではあるが、それは大総統になった時にでも叶えることにしよう。


「べ、別にお礼など言われることでは///」


何となく気恥ずかしそうな彼女が、ロイにはとても可愛く思えた。


「ところで中尉。午前の任務は、もう終わりそうかね??」


「え、ええ。ちょうど整理し終わったところなので、お昼にしようかと思っておりますが。」


「なら、早く更衣室に行って、私服に着替えてくるといい。君の今日の任務は午前中で終わりなんだ。
 ああ、ちゃんとグラマン中将から許可は戴いているから、安心したまえ。」


「は、はぁ??」


リザは、ロイが何を言っているのか直ぐには理解できなかった。


「まあ、驚くのも無理はないがね。先日までの激務は、何も私だけではなかっただろう??
副官の君にも随分と無理をさせたからね。君にも午後の休みの許可を戴いたら、あっさりと許可を出して戴けたんだよ。」


「で、でも…。」


『やはり真面目な彼女のことだ。そう簡単には納得してはくれないか。
 ならば奥の手を使うしかあるまい。』


ロイはリザの耳元へ思いっきり顔を近づけ、リザが一番弱い声で囁いた。


「私にとって、君と過ごす時間が一番の癒しなんだがね。」


「〜〜〜〜〜///」


今から司令部を出れば、ちょうど昼食の時間になる。

地元で旨いと有名なお弁当屋さんで、2人分の弁当を買って、花見でもしようか。

後は、昨日のうちに予約しておいたレストランでディナーだな。

その後はもちろん、どちらかの家で…。




いつもより少し早く訪れた恋人たちの時間。

たまにはこんな日も悪くない。








*あとがき*

お題6つ目を消化です。
思っていた以上に長くなってしまったので、前後編に分けました。
にしても、相変わらずベタベタな展開ですみません…。
どうやら、この手の展開が大好きなようで(苦笑)
『鋼の受難』のストーリーを進めてた時に、エドがウィンリィに「このチームで何をお願いするつもりなんだ??」って聞いてたのをきっかけに妄想したネタです。
リザさんの願いってなんやろな〜って思いまして…。
こんなに引っ張る事でもなかったな(笑)
皆さんは、何やと思いましたか??
『汚名返上大作戦』は、もうあのままで十分ですので、あえてこの2つで(笑)
読んでくださってありがとうございました。
4/7 2008